国語の点数が伸びない、または安定しない受験生の悩みのひとつとして、「説明文を読むのがイヤで、思ったように点数がとれない……」、「説明文は何が書いてあるのか、いまいちピンとこない……」など、説明文への苦手意識があげられます。
物語文を解くのは好きだけれど、説明文が苦手という子どもたちを今までにたくさん見てきました!
とくに、塾で実施されるテスト(組分けテスト、復習テスト、オープン模試)を受けるたびに偏差値が上下してしまう場合、説明文(論説文)をしっかりと得点できているかどうか、解答用紙を引っ張り出して確かめてみましょう。
今回の記事では、説明文・論説文の読解のポイントをズバっと公開します!
目次
説明文・論説文はなぜ難しいのか?
はじめに、この記事を読んでいるみなさん、「説明文とはどのような文章のことを指すのか?」を想像してみてください。みなさんは「説明文とは何か?」をパっと答えられるでしょうか?
説明文と論説文がどのようなものかがわかると、その読解が難しい理由を理解しやすくなります。
説明文や論説文の読解が難しいのはなぜか?
子どもたちが説明文・論説文の読解を「難しい」と感じる理由は大きく分けて次の3つです。
- テーマ(=主題)が難しい
- 文章の語彙が難しい
- 文のひとつひとつが長く、文章が複雑
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
子どもたちにとって、読解する説明文・論説文のテーマが身近なものであれば、文章も頭のなかにスッと入ってくるでしょう。ところが、ふだんの生活のなかでなじみのない「話題」がつらつらと書かれていると、「何が書いてあるのかよくわからない」と感じられ、理解しようとする気持ちが少しずつ失われます。そのため、「説明文は難しい…」という先入観をもってしまうことも…。
文章の書かれている語彙そのものが難しい場合、子どもたちは書かれている内容をしっかりと理解することができず、消化不良のまま設問を解かなければなりません。テーマと同じく、とくになじみの薄い言葉ばかりが文章に並ぶと、「何が書いてあるのかわからない」という状態になってしまいます。
文のひとつひとつが長いと、文そのものの意味がわかりにくくなります。また、文章の構造が複雑だと、文と文とのつながりがはっきりとせず、筆者の述べている論理をつかみにくくなることもあるでしょう。
説明文・論説文の読解のポイント
説明文・論説文がどのように難しいのかはこれまでに書いた通りです。ここからは、「難しい」とされる説明文・論説文の読解のポイントをスバっと公開します。読み方と解き方の方法を身につければ、私立中学受験、公立高校受験だけでなく、大学入学共通テストにも応用可能です。
効果のある読解の「方法(コツ)」を身につければ、文章を読むことが苦手な人であっても、国語の得点力を上げることができるので、安心して読み進めてください。
読解は「読む」力と「解く」力が大切
国語の「読解」はその字の通り、「読む」と「解く」のどちらの力も大切です。国語の「読む」力については以下の記事に書いているので、ぜひ参照ください。
今回の記事では、説明文・論説文にしぼった読解のポイントを解説します。ポイントは「読み方」と「解き方」の2つにわけられるので、ひとつずつ見ていきましょう。
国語の点数を安定(アップ)させるには、「読む」力を高めることが大切!説明文・論説文の読み方の基本
説明文・論説文(=以下、説明的文章)の読み方のポイントを解説する前に、みなさんに守ってほしい基本的なルールが2つあります。
- 問題本文(課題文)をはじめに通読する
- 問題本文に線を引く(マーキングする)
1. 問題本文(課題文)をはじめに通読する
私立の難関中学の入試でよく出題されるパターンのひとつとして、答えの根拠が設問の傍線部からかなり離れている場合があります。そのような問題では、本文に傍線部が出てくるたびに設問を解こうとすると、答えの根拠をはっきりと見つけられないまま、何となく解答を書いてしまうことになりかねません。
説明的文章の抜き出し問題、筆者の意見・主張をつかむ問題は、答えの根拠が傍線部から離れていることもままあるので、本文は必ず通読してから設問にあたるようにしましょう。ただし、大問や設問の構成を把握するために、全体に目を通すことは必要です。
2. 問題本文に線を引く(マーキングする)
問題本文を通読するときは、文章のポイントとなるところに線を引きます。説明的文章の内容を理解するには、書かれた情報を整理することがもっとも大切です。マーキングは情報整理の「見える化」と言えるので、設問を解くためのヒントとなります。説明的文章の読解が苦手な人はだまされたと思って、必ず行ってください。
具体的に、文章のどのようなところにマーキングするのかは後ほどくわしく説明します。
読み方のポイント
説明的文章の読み方のポイントは以下の6つです。
- 「まとめ」と「具体例」にわけて読む
- 「対比」と「列挙」の文章構造に注意
- 「問いかけ」と「答え」をチェック
- 逆接の接続語をチェック
- まとめ言葉をチェック
- 筆者の主張・意見となる文末表現をチェック
説明的文章は大きく2つのパート(部分)にわけることができます。
- まとめ(抽象)
- 具体例(具象)
「まとめ」とは筆者の述べたいことを抽象的に書いたものです。ただし、抽象的な説明はわかりにくいことが多いので、筆者は読者がよりイメージしやすいように具体的な例を使って説明します。
例えば、「りんごの絵を描きなさい」と言われれば、ほとんどの人がほぼ同じ絵を描くはずです。それは「みかん」でも「ぶどう」でも同じことが起こりえます。つまり、「誰もが具体的に頭のなかにイメージできるもの=具体例」なのです。
それに対して、「りんご」、「みかん」、「ぶどう」をまとめると、「フルーツ」あるいは「果物」とグループ化することができます。「フルーツの絵を描きなさい」と言われれば、人それぞれさまざまな種類のフルーツを描くでしょう。すなわち、まとめられたものは抽象的なのです。
説明的文章を読むうえで、「まとめ」と「具体例」をセットでマーキングするようにしましょう。どの「まとめ」がどの「具体例」に対応しているのかがわかれば、筆者の述べたいことをよりイメージしやすくなります。
説明的文章のなかでよく使われる表現であり、また、設問として頻出なのが「対比」と「列挙」の2つです。
例)「東洋と西洋」、「自然と人工」など。
対比は「何と何とが比べられているのか」と「どのような違いを述べたいのか」の両方をしっかりととらえるようにしましょう。また、対比を示す「つなぎ言葉」として、「それに対して」と「一方」が文章に登場したら、必ずマーキングをしてください。
「列挙」を示す言葉は以下の4つを本文中で見かけたらしっかりとマーキングしましょう。
- 第一に、第二に、第三に
- 一つ目、二つ目。三つ目
- まず、次に、最後に
- はじめに、さらに
対比と列挙は私立中学と大学入試に頻出の文章表現なので、今からチェックするクセをつけておくことをオススメします。
筆者が文章のテーマを示すときに使う方法のひとつが、「問いかけ」と「答え」です。例えば、本文中における「みなさんは◯◯というものを知っているでしょうか?」という問いかけは、読者に質問しているわけではありません。それは「私がこれから述べることは◯◯です」という筆者のメッセージです。
もし、「問いかけ」と「答え」を見かけたら、それが筆者の書きたい「テーマ=主題」ですから、必ずマーキングをしておきましょう。テーマをチェックできれば、本文の内容を理解するのに役立ちます。とくに、問題文のなかに2つ以上のテーマがある場合、どこで話題が切り替わっているのかを知るためにも、「問いかけ」と「答え」をしっかりと探してください。
「だが、しかし、ところが、けれども」などの逆接の接続語の後ろには筆者の意見や主張がくることがままあります。説明的文章は「ふつう、◯◯は〜だと思われている。しかし、◯◯は実のところ〜だ」のように、「一般論(常識)→主張・意見」の順番に書くことがオーソドックスです。
逆接の接続語は大きくわけて以下の2つの役割をもっています。
- 読者の注目を集める
- 後ろの文を強調(アピール)する
とくによく使われるのは「私たちは◯◯を常識だと思っている。しかし、実は〜」という形式です。逆接を用いることで、読者は「◯◯は常識ではないの?」と興味をひかれます。筆者は読者の注目を集めたうえで「主張・意見」を述べるのです。
本文中の逆接の接続語は必ずチェックし、かつ、その後ろの文も筆者の述べたいことなので、しっかりと線を引いておきましょう。
先に述べたように、筆者の述べたいことは「まとめ」に書かれます。そのため、まとめを導く「まとめ言葉」は必ずチェックしてください。マーキングするものは以下の4つです。
- このように(そのように)
- つまり
- すなわち
- 要するに
筆者の主張や意見となる「文」は、文末の表現をチェックすることで探し出すことができます。主張や意見を表す文末は以下の通りです。
- 〜する必要がある
- 〜すべきだ
- 〜しないといけない
- 〜しなければならない
筆者の主張・意見を問うものは入試によく出題されるので、もし本文中に「服を着る必要がある」、「服を着るべきだ」、「服を着ないといけない」など、上記の文末表現を見つけたらしっかりとマーキングしましょう。
解き方のポイント
解き方のポイントは記号選択、記述、抜き出し、脱文挿入など設問の種類によってさまざまですが、ここでは共通して使える解法の「コツ」を3つ挙げます。
- 設問条件の分析
- 傍線部の表現の分析
- 設問のつながりを意識する
設問の条件をしっかりと読み、作問者がどのようなことについて聞いているのかを分析することは、国語の得点力アップに欠かせないポイントです。
例えば、記号選択でよく見かける引っかけのひとつとして、以下のような問題があります。どれが正解になるか、みなさんも考えてみてください。
_線部①「◯◯となった」とありますが、その理由としてもっともふさわしいものを次の1〜4から選びなさい。
1. ◯◯は△△なので、〜だから。(本文の内容と一致)
2. ◯◯によって、〜になったから。(本文の内容と一致)
3. 本文の内容と不一致
4. 本文の内容と不一致
記号選択の「正誤」はまず、本文の内容と一致しているかどうかを確認します。上記の問題であれば、本文の内容と不一致な3と4は消去できるので、1と2から正解を選びましょう。さて、どちらが正解でしょうか?
この問題の答えは「1」が正解です。この設問は「◯◯となった」理由を聞いているので、「◯◯が原因(理由)となって、〜という結果になった」とある2の選択肢は、本文中に書かれている内容と一致していても、答えとしては不適切となります。
このような問題を正確に解くには、設問で聞かれている内容をしっかりとマーキングしてから、選択肢を細かく精査するようにしましょう。
傍線部または傍線部をふくむ一文は、そのなかに指示語、接続語、比喩があるかを確認してください。これらをマーキングしたら、次の作業をしながら設問を解きます。
- 指示語→指している内容をチェック
- 接続語→順接、逆接をチェック
- 比喩→言いかえの表現を考える
また、傍線部が「まとめ」であれば対応する具体例を、「具体例」であれば対応するまとめを探しましょう。答えのヒントは対応する部分にあることがほとんどです。
算数や数学で、大問の(1)の答えをもとに(2)や(3)を解いていくのと同じように、国語においてもすでに解いた設問をヒントにして、後ろの設問を解くように意識しましょう。
作問者は多くの受験生が難しいと悩む問題であっても、正解へと誘導(リード)する「ヒント問題」を用意していることがあります。とくに、記号選択の選択肢に書かれている文は後ろの設問を解くうえでの大きなヒントになるので、つねに「この設問とつながっているのはどの設問だろう?」と意識してみてください。
説明的文章への苦手意識がとれない場合は…
説明的文章を解くのが苦手な人であっても、ここまでに書いてきたポイントをしっかりと身につければ、得点力は必ず上がります。ただ、国語はすぐに点数が上がらない科目なので、コツコツと「読み方」と「解き方」を身につけましょう。
説明的文章への苦手意識がとれない場合は、まず、「読み方」のポイントを試すことをオススメします。問題文を読みながらマーキングをすることで、説明的文章がどのような構造で書かれているのかが少しずつわかってくるはずです。
とくに、「まとめと具体例」、「対比」、「列挙」に注意しながらマーキングをするだけでも、筆者が述べたいことの内容をつかみやすくなると思います。問題本文に線を引くクセをつければ、説明的文章への苦手意識をとりのぞくまでもうすぐです。目に見えて得点が上がらなくても、あきらめることなくコツコツと演習を続けましょう。
最後に
説明的文章は「読み方」と「解き方」のポイントをしっかりと押さえれば、高い得点を安定して取ることができるジャンルです。今回の記事で書いた方法を参考に演習をくり返してみてください。
分かりやすい