小・中学生が語彙力をつけるための方法をわかりやすく解説!

今、まさにこの瞬間にも、TwitterやInstagramなどのSNSには「語彙力」というハッシュタグのついた投稿があふれています。ただ、そこで投稿されている「語彙力」はプラスの意味で使われているものばかりではありません。

「語彙力」の使用例
「楽しすぎて楽しい(語彙力)」
「すごいやばいまじやばい(語彙力なし)」

上の2つの例文では、自分の感情をさまざまな言葉で表せないことへの自虐として、語彙力が使われています。このような言葉の貧しさは、細かなニュアンスを相手に伝えたり、複雑な感情表現を理解するのにも大きな妨げとなるでしょう。

それでは、語彙力が低下する(落ちる)とどうなるのでしょうか?

文章を読むことが苦手になる?

語彙力の低下とセットで語られるのは、文章の読解力についてです。例えば、知らない言葉が多く出てくる文章を読んだとしても、その内容を理解することは難しいでしょう。語彙が不足していると、字のつらなりをただ眺めるだけになってしまい、書かれていることの意味を読みとることができません。つまり、語彙の不足にともなって、読解力も低下するのです。

文章を読むのが苦手な子どもたち

私たちの生活にはさまざまな「文」があふれています。テレビやYouTube動画に使われるテロップ、今や誰もが利用しているLINEのメッセージなど、1日の生活のなかでも文を目にしないことはありません。このように、日常のなかでさまざまな言葉にふれていたとしても、小・中学生のなかにはまとまった文章や本を読むのが苦手な子どもがいるのです。

文章や本の内容を読みとる力は、どれだけの語彙がその人のなかに貯まっているのかによります。そのため、日常生活のなかで「ただ」目にした耳にしただけでは、言葉が文章の読解に使えるまでになっているとは言えないのです。わからない言葉を調べたり、漢字や文脈から言葉の意味を推測するなど、語彙を増やす習慣が身についているのかが、文章を読みとる力に大きくかかわっています。

文章を読みとる力は学力にも影響する?

文章を読むことが苦手だと、学力にどのような影響があるのでしょうか。私たちは誰もが言葉でモノゴトを考えます。また、複雑なものをわかりやすい言葉で言い換えて理解するなど、語彙力の「ある・なし」は思考力と切っても切り離せない関係にあるのです。

小・中学校の教科書やテストはほとんど日本語で書かれている(英語などを除くと)ため、わからない言葉が多ければそれだけ読むスピードも遅くなり、理解することも難しくなるでしょう。文章がわからないと、テストの問題を解くことはできません。つまり、語彙力の不足は学力の低下につながるのです。

新しい学習指導要領は「語彙の改善」もポイントに

小学校では2020年の4月、中学校では2021年の4月から新学習指導要領が実施され、そのポイントのひとつとなる「言語能力の育成」なかでも、語彙力の改善がとり上げられています。これは文章の読解力が、国語だけではなくすべての教科の学力に大きな影響を与えるからです。

そもそも文章を読む力がなければ、教科書やテストの問題を理解することもできませんし、さまざまな言葉を使って自分の考えや気持ちを表現することもできません。今後の小・中学校の教育では、思考や感情を能動的に表現することが求められます。そのときに、言葉を「知る・わかる」というインプットがなければ、言葉で表現するというアウトプットもできないのです。

語彙力をつける(伸ばす)には?

子どもたちの語彙力をつける(伸ばす)にはどうすればよいのでしょうか? それを考える前に、まずは語彙力を2つの種類にわけて整理をしておきましょう。

  1. 認知語彙:見たときにわかる言葉
  2. 使用語彙:使える言葉

認知語彙と使用語彙とは?

語彙力の分類は大きく「認知」と「使用」の2つです。パっと言われてもイメージがしにくいので、それぞれを噛みくだいて説明します。

1. 認知語彙

認知語彙とは、目で見たり耳で聞いたときにおおよそ理解(イメージ)のできる言葉の集まりです。読書などをしていて、何となく意味を推測できたりする言葉もこれに当たります。

認知語彙は本を読んだり人と会話をしたりすることで、インプットすることができるものです。もし、意味がはっきりとわからない言葉に出会ったら、辞書などを引いて調べるようにしましょう。そのときに類義語(似た意味)と対義語(反対の意味)も一緒に覚えておくと、語彙をどんどん増やすことができます。

2. 使用語彙

使用語彙とは、会話をしたり文章を書いたりするなかで「使う」ことのできる言葉の集まりです。これらは言葉を繰り返し書いたり・話したり(アウトプット)することで、使えるものとして定着していきます。

生活のなかで使う言葉を豊かにするためには、まず「認知語彙」を増やす(インプットする)ことが大切です。たくさんの言葉をインプットすることで、使える言葉も増やすことができるでしょう。

語彙力をつける方法は?

子どもたちが語彙力をつけるには、インプットを通して「認知語彙」を増やし、それらをアウトプットすることによって「使用語彙」として定着させることが大切です。

先にも述べたように、私たちの生活のなかにはたくさんの言葉があふれているので、インプットの機会は多くあります。また、小学校では漢字や作文を書いたり、先生の質問に自分の言葉で答えたりなどのアウトプットもしています。ではなぜ、子どもたちによって語彙力に差がつくのでしょうか?

抽象的な言葉は自然と身につきにくい

子どもたちがふだんの生活のなかで使う言葉は「具象的」なものがほとんどです。具象的な言葉とは例えば、「テレビ」や「学校」、「ママ」、「パパ」、「寝る」、「歩く」、「話す」など身の回りにあるものや頭の中でイメージしやすいものを指します。これらは子どもたちの生活に馴染み深いものなので、すぐに「使用語彙」となります。

それに対して、小学校や中学校に通うと多く習うことになる「抽象語句」は、意識的に覚えようとしないかぎり、定着するのに時間がかかるものです。抽象語句とは例えば、「歴史」、「社会」、「ともかく」、「さすが」、「ないがしろにする」などパっとイメージがしにくい言葉を指します。大人であっても、「ともかく」の意味を子どもにわかりやすく説明するのは簡単ではないでしょう。

抽象語句を身につける方法は?

抽象語句は自然と身につかないので、意識的に覚えるようにしましょう。

抽象語句はふだんの生活で自然と身につくものではありません。そのため、初めて見たり聞いたりした抽象的な言葉は、辞書などを使って調べたり、大人と一緒に意味を推測するなど、意識的に覚えようとする姿勢が必要でしょう。小学校の低学年のうちからコツコツと語句をインプットしていくことで、中学校の抽象度の高い教科書も理解することができるようになります。

インプットとアウトプットにわけて考える

語彙力をつける方法は、インプットとアウトプットにわけて考えるのがベストです。

インプットする方法
  1. 本を読む
  2. 漢字の音と訓をしっかりと覚える
  3. ニュースなどを見る
  4. 家庭で主語と述語のある会話をする

語句をインプットするには、本を読む、漢字の読み書きをする、ニュースを見る、家庭で会話をするなどでしょう。つまりは「読む」、「聞く」をふだんの家庭や学校生活のなかで繰り返すことで、子どもたちは語句をどんどん吸収していきます。そして、知らない言葉がでてきたら、それを調べる習慣をつけるようにすることが大切です。

漢字は語彙を増やすのにとても重要な役割を果たします。漢字の訓読みは「意味」を表しているため、例えば「国語」であれば「(日本という)国(の)(言)語」なのだと推測できます。漢字の訓を理解することで、多くの熟語を「認知語彙」にすることができるのです。

小・中学生のなかで、本を読んだりニュースを見たりするのが苦手な子どもには、市販のテキストを使って学習をするのもよいでしょう。オススメは以下の2冊です。

アウトプットする方法
  1. 作文を書く
  2. 漢字の熟語を書いて覚える
  3. 知らない言葉をわかりやすく言い換える
  4. 主語と述語のある会話をする

アウトプットでは「書く」、「話す」がメインとなります。使用語彙を増やす方法としては、いくつかの語句(3〜5語ほど)を使って50字以内の文章を書く、知らない言葉をわかりやすく言い換える、主語と述語のある会話をするなどが効果的です。

言葉のもつ「深さ」を理解する

抽象的な語彙は、1回調べたりしただけではなかなか覚えられません。子どもたちは、それらの言葉を何回も繰り返し見たり聞いたりすることで、少しずつ意味を理解していきます。

そして、例えば「経済」のような大人でもパっとわかりやすく説明できない言葉は、それと密接に関係する「金融」、「財政」、「企業」などの言葉とともに理解することで、より豊かなイメージとして身につけることができるでしょう。このように、抽象的な言葉のもつ「深さ」を理解することで、語彙はより豊かなものとなります

まとめ

語彙力は一長一短に身につくものではありません。インプットとアウトプットを何回も繰り返す(反復する)ことで、私たちは豊かな語彙力を身につけることができるのです。語彙力を高めるために、インプットとアウトプットを「習慣化」させましょう。

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