2020年度から小学校の英語教育が変わります。大きな変化は2つです。
- 対象となる学年は小学3〜6年
- 英語の授業は教科書を使い、成績をつける
これまで高学年(小学5・6年生)が行ってきた「外国語活動」が小学3・4年生にまで拡げられました。また、小学5・6年生の英語は、文部科学省の認めた教科書を使って授業を進め、通知表に成績がつくことになります。
ご家庭によっては、家庭学習用として英語の教科書がもう手もとにあるのではないでしょうか? 教科書を目の前にすると、「どうやって英語の家庭学習をしたらいいの?」と悩んでしまいますよね!
- 低学生は英語の読み・書きを習うの?
- 高学生は中学校のように文法も習うの?
- 休校期間はどうやって勉強すればよいの?
- テストはあるの?
小学校の休業(休校)期間が5月末まで延長され、新しい英語教育はそれぞれの家庭任せになってるのが現状です。今回の記事では、小学校の英語で重視される内容を解説し、家庭学習としてできることもご紹介します。
目次
小学校の英語で重視されるものは?
日本は2020年に小学校の外国語(英語)教育をガラリと変えました。国が小学校の英語で重視しているものはどのようなものなのでしょうか?
国は新しい学習指導要領において、外国語活動の目標をはっきりと示しています。
参考 小学校学習指導要領解説文部科学省HP小学生の外国語活動の目標は大きく3つ
小学生の外国語活動の目標は大きくわけると以下の3つです。
- 外国の言語や文化についての理解を深め、外国語の音声や表現に慣れ親しむ
- 「聞く」と「話す」を中心に、外国語で自分の考えや気持ちを伝え合える
- 他の言語や文化を深く理解し、外国語を用いて主体的にコミュニケーションを図る
文部科学省が示した新しい新指導要領を読むと、子どもたちに学んで欲しいものがはっきりとわかります。ただ、言葉がやや堅苦しいですよね。
そこで、これらの3つを2つにまとめ、もう少し噛みくだいて説明をします。
1. 世界にはさまざまな言葉や文化があることを知る
現在の日本は外国人の来訪が増えています。もしかしたら、この記事の読者のなかに、街で外国人観光客から話しかけられた経験のある人もいるでしょう。私たちが外国人と接する機会はどんどん増えているのです。
今の小学生は近い将来、さまざまな文化や歴史をもつ外国の人たちとコミュニケーションをとり、共生していくことが求められます。そのような共生の姿勢を学ぶには、9〜12歳の感受性の高い時期が向いているのです。
世界には日本と違う文化があることを知れば、外国人とコミュニケーションをとる上で、それぞれのルーツ(文化・歴史的な背景)を認め合い、お互いを尊重することができるでしょう。
2. 英語を使い、外国人と主体的なコミュニケーションをとる
もうひとつは多くの日本人に心当たりのあることです。
日本人は積極的に英語を使って外国人と話そうとしない
皆さんも胸に手を当てて考えてみれば、「道で困っている外国人を見かけたけれど、話しかけられなかった」とか「街で外国人から話しかけれないように、目を合わせずに通り過ぎる」などの経験がありませんか?
日本人が英語を話せるようになるには、約3000時間の学習が必要と言われています。これは英語を毎日3時間勉強したとしても、3年以上かかる時間です。イヤ、もう想像しただけでもゲッソリしますよね……。
文部科学省とすれば、少しでも早い時期から英語に慣れ親しむことで、話すために必要とされるトレーニングの時間を得たいのでしょう。そして、日本人の多くが英語を話せるようになれば、積極的に外国人とコミュニケーションがとれると考えているのです。
小学校の英語の授業はどのようなことを学ぶのか?
ここからは小学校の英語の授業で、どのようなことを学ぶのかを解説します。英語を学ぶのは小学生3〜6年生です。3・4年生は「外国語活動」、5・6年生は教科として「英語」を学びます。
子どもたちがどのようなことを学ぶのか、もう少し詳しく見ておきましょう!
「外国語活動」と「英語の教科化」
外国語の活動や英語が教科になると言われても、いまいちピンときませんよね。まずはこの2つを整理しておきましょう。
外国語活動とは
お父さんやお母さんは、それぞれの小学校時代のことを思い出してみて下さい。水曜日や金曜日の5・6時間目に、さまざまな部活動を行った経験はありませんか?
外国語活動はこのような部活動とほぼ同じです。小学校のなかで教えなければならない(必修)けれど、教科書を使って学んだり、成績がついたりすることはありません。
英語の教科化
英語が教科になるということは、文部科学省の認めた教科書を使って授業を進め、国語・算数・理科・社会と同じように成績がつきます。つまり、通知表に「英語」という科目がプラスされるのです。
評価をすると聞いて、保護者の方のなかには「テストがあるの?」と心配する人もいらっしゃるでしょう。現在の英語の授業はそれぞれの学校の裁量に任されており、国語や算数と同じようなテストが実施されるのかはわかりません。
2020年度は英語が教科となって1年目ということもあり、学校が成績評価のためのテストをする可能性は低いと考えます。
「外国語活動」と教科としての「英語」はどのようなことを学ぶのか?
「外国語活動」と教科としての「英語」は、それぞれどのようなことを学ぶのでしょうか?
小学3・4年生の外国語活動
小学3・4年生は英語の4つの技能「聞く・話す・読む・書く」のうち、「聞く」と「話す」が中心です。活動は英語に楽しく触れることに重点をおきます。
- 技能:「聞くこと」・「話すこと」
- 年間35時間
- 英語に楽しく触れる活動
- 「おはよう」「こんには」「さようなら」などのあいさつ
- 動物、スポーツ、食べもの、文房具などの名前
- 好きなものを伝える、好きなものを尋ねる
- 1〜20までの数の数え方
- 曜日の名前
- 時間を尋ねて、それに答える
小学3・4年生の活動はとにかく「英語」に慣れ親しむことが中心です。活動ではイラストを見ながらチャンツ(=chant/英語の言葉や文をリズムに合わせて歌うように発音されたもの)を聞き、その後にリズムに合わせて発音するなどを行います。
また、歌を歌ったり、ゲームをするなど、子どもたちが楽しめるものが多く取り入れられているのも大きな特徴です。
小学5・6年生の「英語」
小学5・6年生は4つの技能「聞く・話す・読む・書く」のすべてを使って英語を学びます。授業は「担任の先生+専任の英語教員」の2人体制です。
- 技能:4技能のすべて
- 年間70時間
- 英語の表現に慣れ親しみ、日本語との違いを理解する
- 月の名前と季節の行事、誕生日の表現
- 学校で学ぶ教科や活動
- can(できる)の表現
- I want to go to〜など、行ってみたい国や地域
- HeやSheを使った人物紹介
- 自分たちの住んでいる街の紹介
- オリンピック・パラリンピックの競技の名前
- 将来の夢、なりたい職業
小学5・6年生の授業は、映像や音声を「見聞き」する→チャンツの発音→ゲームなどを通じて話す(クラスの人と短い会話をする)ことを行い、英語の表現に慣れ親しみます。「I wanto to go to CAnada.」や「I want to be a teacher.」など、中学生で習う表現が出てくるのは大きな特徴と言えるでしょう。
また、小学5年生からアルファベットの書き取りが始まり、6年生では短い文の読み書きも行います。これまでは中学生で習うことになったアルファベットの大文字と小文字の読み書きは、小学校の英語に移行する形となりました。
小学校の英語では中学校で学ぶ「文法」を扱いません! 小学5・6年生では「楽しむ」気持ちを大切に、英語に慣れ親しむことが中心となります。
家庭学習はどのようなことをすればよいのか?
英語の家庭学習は、英語を楽しむことを最優先としましょう。英語は中学校に入ってからたっぷりと「勉強」する時間があるので、小学生のうちは「英語キライ」にしないことが大切です。「英語はイヤ!」という気持ちをもつと、中学以降が大変なことになります。
小学3・4年生は音声を中心に!
小学3・4年生の家庭学習は英語の音声を聞き、恥ずかしがらずに言葉を発音するようにしましょう。英単語のつづりを覚えたり、英文を書いて覚える必要はありません。
Let's Tryの音声データ
コロナ禍による小学校の休業(休校)にともない、学校から英語の教材が配られているご家庭もあることでしょう。教材「Let's Try」の音声データが文部科学省のHPに掲載されています。以下のリンクを参考にして下さい。
参考 小学校外国語活動教材「Let's Try!」及び小学校外国語教材「We Can!」 音声データリンク一覧文部科学省HPお父さんやお母さんは、子どもと一緒にリズムにのって、英語を元気よく発音してみましょう。大切なのは恥ずかしがらずに声を出すことです。リズムに慣れてきたら、教材のイラストを指で指しながら発音しましょう。
発音が難しい場合は、アルファベットを読もう!
言葉の発音が上手くマネできなくても心配しないで下さい。もしお子さんが発音を苦手そうにしていたら、言葉の前に「アルファベット」を発音してみましょう。A〜Zまでを繰り返し発音しているとアラ不思議、言葉も上手く発音できるようになります。
短い時間(10〜15分)でもOKなので、毎日英語に触れましょう
毎日英語の音に触れていると、少しずつ子どもたちの耳が慣れてきます。1日に10〜15分と短い時間でもOKなので、子どもたちと一緒に教材を使って発音をするとよいでしょう。この時期は音に慣れ親しむのが最優先です。
小学5・6年生は「読み」「書き」をとり入れる
小学5・6年生であっても、とにかく「楽しむ」と「慣れ親しむ」が最優先! 家庭学習においては、子どもが「英語キライ」にならないように注意をしましょう。5年生からは「読み」「書き」が始まるので、それぞれの子どものペースに合わせることが大切です。
英語の4線ノートを使おう!
子どもたちが英語の書き取りで苦労するのは、アルファベットを教科書通りにマネできないことが上げられます。そのような不安をなくすため、アルファベットを習い始めた小学校では必ず「4線の英語ノート」を使うようにしましょう。
どの英語ノートが小学生に最適なのかは、「Campusノート」で有名なコクヨHPに詳しく書いてあるので、以下をご覧下さい。
参考 英語ノートのあの4本の罫線の「まん中」を広くしたのはなぜですか?コクヨHP英語の書き取りはまずアルファベットから!
英語の書き取りは、アルファベットのA〜Zを教科書の通りにマネできるかが大切です。はじめのうちは、お父さんやお母さんがA〜Zをノートに書き、お子さんはその字を上からなぞるようにするのがよいでしょう。慣れてきたら、教科書の文字をしっかりと見て、ノートに書き写します。このとき、アルファベットは発音をしながら書くようにしましょう。
小学生がアルファベットの大文字と小文字を見本なしで書けるようになるには、かなりの時間がかかります。お父さんやお母さんは「どうして覚えられないの!」などの声かけはしないようにしましょう! 焦らずにじっくりと取り組めばOKです!
聞く・話す→読む・書くの順番が大切!
小学5年生の終わり頃や6年生になると、子どもたちも英語に慣れてきます。スラスラと発音できるようになったお子さんの姿を見ると、お父さんやお母さんは「発音にダラダラと時間をかけるより、読み書きをさせよう!」となるかもしれません。
小学生のうちは、「聞く・話す」→「読む・書く」の順番を徹底しましょう!
これは中学生になっても言えることなのですが、発音できないものをいくら書いてもなかなか定着しません。とにかく書くまえに発音をしっかりとするようにしましょう。チャンツのリズムで発音をすれば、子どもたちも飽きることなく練習ができるはずです。
「わかち書き」ができるようにしよう
日本語は「わかち書き」をしない言語です。反対に英語は「わかち書き」をします。英語の文をはじめて書く小学生は、この「わかち書き」ができずに苦労することも……。まず、分かち書きがどのようなものかを見ておきましょう。
- 日本語:私は将来、イタリアに行きたいです。
- 英 語:I want to go to Italy in the future.
日本語は読点が入らないかぎり、単語ごとに離して書くことはありません。それに対して英語は「i want」のように単語と単語の間にスペースが入ります。このスペースを空けて書くことが「わかち書き」です。
小学生のうちはこのわかち書きができるように、「単語がひとつのまとまり」なのだということを意識させるようにします。もっとも簡単な方法は、教科書の文に以下のような書き込みをしましょう。
このようにスペースに「|」を書き込むことで、「単語がひとつのまとまり」だということが目で見てわかります。子どもがわかち書きを苦手にしていたら、この方法を試してみて下さい。
小学6年生まで学習すれば、自己紹介のスピーチができる
小学6年生まで学習すれば、子どもたちは自己紹介のスピーチができるようになります。教科書に書いてあるフレーズを組み合わせれば、それぞれの自己紹介が簡単にできるのです。もし、お子さんが英語が好きであれば、小学6年生の冬休みに「自己紹介のスピーチ」に挑戦するのもよいでしょう。
まとめ
小学校の英語の「必修化」と「教科化」が2020年度にスタートを切りました。ZoomやGoogle Classroomなどでオンライン授業を実施している公立学校は全国でもまだわずかであり、多くは「家庭学習」に任せられています。
英語の新しい課程が始まったにもかかわらず、学校で授業のできない現状に不安をかかえているご家庭は多いでしょう。小学校の英語で大切なことは「楽しむ」ことと「慣れ親しむ」ことの2つです。
小学3〜6年生のお子さんをもつお父さんやお母さんは、学校から配られた教材や教科書をパラパラと眺めてみて下さい。そして、気になる言葉やフレーズを見つけたら、子どもと一緒にリズムにのって発音したりしましょう。英語の学習を難しく考える必要はありません。まずは声を出すこと、それがスタートです。