中学3年生の秋頃になると、受験生のなかには公立高校入試の過去問にとり組み始める人もちらほらと出てくるでしょう。そんなとき、まだ入試の過去問を開いたことがない人は、「もう始めないといけないのかな?」と不安になりますよね。
- いつから過去問を始めたらよいの?
- どれくらいの年数分を解けばよいの?
- 過去問の解き方と入試への活用方法は?
「入試の過去問を解きましょう!」とススメられても、「どのようにとり組めばよいのかがわからない」と不安に感じる受験生もいるはずです。
でも、安心してください。この記事を読んで、過去問についての悩みをスッキリさせましょう!
今回の記事では過去問を使う・解くときのポイントについて、わかりやすく解説します。
目次
過去問で入試の分析をしよう!
入試の過去問題集を使って初めにしなければならないことは、「入試の分析」です。ではなぜ、初めに入試の分析をするのでしょうか?
なぜ入試を分析するのか?
神奈川県のほとんどの塾では入試問題の分析を行っています。とくに、大手の塾は独自のテキストや模試を作成するため、より細かく入試を分析することでしょう。ただ、塾が行う分析は「出題傾向」や「問題の難易度」など、神奈川県の公立高校入試の特徴をはっきりとさせるためのものです。
塾の分析は「県立高校の入試はこのような特徴があります」というものであって、受験生ひとりひとりの志望校や学力に合わせたものではありません。つまり、塾に通っている人もそうでない人も、自分自身に合った入試の分析をする必要があるのです。
受験生それぞれに合った入試分析とは?
受験生それぞれの志望校、学力、内申点はさまざまです。志望校に合格するための入試の得点もひとりひとり違います。ここではわかりやすく説明するために、「中3女子のかな子」さんに登場してもらいましょう。
中3女子のかな子さんは海老名高校を志望しています。内申点(評定)から計算すると、入試では5科目合計で350点をとらなければなりません。彼女の得意科目は英語と国語で、模試ではいつも80点以上です。ところが、苦手な数学と社会は50〜70点の間をフラフラとしています。
どのように入試分析をすれば、かな子さんは志望校に合格できるのでしょうか?
苦手科目の数学と社会は入試でとらなければならない点数を計算します。その後、入試問題の正答率をもとに、「どの問題は確実に正解しなければならないのか?」をピックアップしましょう。
ピックアップしたなかで、受験生の正答率が高いにもかかわらず、かな子さんが苦手とする問題をしっかりと解けるようにします。このように入試問題を分析することで、かな子さんは合格に近づくでしょう。
入試の過去問集を開いたら、まずは自分自身の現状に合った「入試分析」をすることが大切です。
- どの科目でどれくらいの点数をとるのか?
- 入試でとるべき点数から考えて、どのように勉強しないといけないのか
この入試分析をすることで、合格するための道のりがはっきりとします。後は、その道をめげることなく着実に進むだけです。
入試分析の手順(方法)
ここからは入試分析の手順を説明します。入試の過去問集を用意したら、以下の手順に従って進めてください。
分析をするときには、前年度の入試問題を用意しましょう。神奈川県の入試問題は出題形式が少しずつ変わるため、直近のものが分析に適しています。
英語・数学・国語・理科・社会の正答率が出ているページをコピーして下さい。もし本をコピーするのが大変なら、神奈川県のHPに正答率がのっているので、それを印刷してもOKです。
「正答率◯◯%以上」の◯◯は志望校のレベルによって変わります。目安は以下の通りです。
トップ校(湘南高校・横浜翠嵐):10%
旧学区トップ校:15〜20%
上位校:20〜30%
中堅校:30〜50%
チェックした問題の配点を合計します。その合計点が、志望校合格に必要な得点を上回っているかを確かめましょう。もし、合計点が下回っているときは、もう少し正答率の低い問題を正解しなければ志望校に合格できないということです。
チェックした問題を解きます。すべて解ければOKです。
正解できなかった問題はきちんと解き直しをします。また、苦手な単元や出題形式がわかったら、その類題を解くようにしましょう。
受験生のひとりひとりがこの手順に沿って入試分析を行うことで、今後は受験勉強(入試対策)をどのように進めればよいのかがわかるはずです。過去問を解く前に、今の自分に足りないものが何かを確認しましょう。そうすれば、質の高い過去問演習ができるようになります。
過去問の解き方・演習方法
過去問の解き方(演習方法)のポイントは以下の7項目。
- 過去問を始めるのは11月から
- 過去6年分を演習
- 入試と同じ制限時間で解く
- 試験本番と同じ「時間割」で解く
- 再演習は「分野別」にまとめて行う
- ノートに解き直しをする
ここに上げた6つはどれも大切なものです。項目をひとつずつ解説します。
過去問を始めるのは11月から
入試の過去問は11月から解き始めましょう。この時期から始める理由は2つあります。
- 過去問の解答・採点には時間がかかる
- 教科書の先取り学習が終わるのは10月末
過去問の解答・採点には時間がかかることと教科書の先取り学習を考えると、入試の過去問を始めるのは11月がベストです。その理由は以下で細かく説明します。
過去問の解答・採点には時間がかかる
英・数・国・理・社の5科目をまるっと解くには「50×5=250分(約4時間)」かかります。さらに採点や正解できなかった問題の解き直しの時間をプラスすると、1年分をしっかりと終わらせるのに1日丸々かかることもあるでしょう。
1回解いた過去問の最演習をすることを考えると、11月から過去問を解き始めるのがベストです。スケジュールに余裕をもたせることで、入試直前の1月〜2月の半ばに「アレも終わってない、コレも終わってない」とバタバタすることがなくなります。
教科書の先取り学習が終わるのは10月末
5科目の教科書内容は、10月末までに終わるように先取り学習をしましょう。先取り学習については下の記事を参照してください。
塾なしで神奈川県「上位」の公立高校に合格するためのチェックリスト【高校受験】過去問を解くのは教科書内容がすべて終わってからがベストです。また、3年生2学期の内申点が高校入試に利用されることからも、11月の2学期期末テストの前から、少しずつ過去問にとり組むのがよいでしょう。
過去6年分の入試を演習
神奈川県の「公立高校 入試過去問題」は声の教育社を東京学参の2つから出版されています。どちらも6年分の過去問が収録されているので、すべて解くようにしましょう。
古い年度からまずは3年分を解く
すでに書いたように、過去問の入試分析は「もっとも新しい年度」のものを使ってください。それに対して、過去問の演習は古い年度から始めるのがよいでしょう。
まず、11〜12月初旬までに「古い年度から3年分」を解くようにしてください。なぜ3年分だけを解くのかというと、再演習をするときは「分野別」にまとめて解く方法をオススメしているからです。「分野別の演習」については後ほど詳しく解説します。
「3年分を解く→分野別にまとめて再演習」が終われば、残りの3年分を解くようにしましょう。このとき、分野ごとの出題パターンを意識しながら解くのがオススメです。
さまざまな難易度の問題を経験できる
6年分の過去問を解くメリットは、さまざまな難易度の問題を経験できることです。神奈川県の入試は年度によって科目の難易度が大きくバラつきます。
過去問を使ってさまざまな難易度の問題に触れることで、入試本番に「えっ!? この科目が難しすぎて泣きそう」などとテンパってしまうことを防げるでしょう。
3年分の追検査について
全県模試を主催する伸学工房のHPでは、過去3年分の「追検査」の問題が掲載されています。過去問演習の総仕上げとして、追検査を解くのもオススメです。ただし、問題の解説と英語のリスニング音声はありません。
リスニングについては、令和2年度と平成31年度の2年分を神奈川県のHPで聴くことができます。それぞれのリンクは以下の通りです。
参考 神奈川県入試 追検査伸学工房HP 参考 令和2年度 共通選抜 学力検査問題神奈川県HP 参考 平成31年度 共通選抜 学力検査問題神奈川県HP塾の授業で入試の過去問を使うかどうかを確認
これについては塾に通う受験生は注意をしてください。塾によっては授業のなかで過去問の演習と解説を行うことがあります。過去問を解く前に、塾の授業で使うのかどうかを先生に確認しておきましょう。
入試と同じ制限時間で解く
過去問は入試と同じ制限時間内に解いてください。時間内に解けなかった問題は解答用紙にバツをつけるのではなく、問題にチェックを入れておきましょう。チェックした問題は採点した後で解くようにします。
また、解き終わったらすぐに採点をするようにしましょう。頭のなかに問題が残っている状態で◯つけをすると、ケアレスミスなどがすぐにわかるのでオススメです。
ペース配分を考える
過去問だけではなく、模擬試験を受けるときにも意識して欲しいことのひとつに、問題を解くペース配分があります。最後までしっかりと問題に目を通すことで、「後ろに簡単な問題があったのに時間がなくて……」などをなくしましょう。
2年分の過去問を解いたら、残りの4年分はペースを考えて(配分して)から解くようにします。例として、英語(50分・2020年度)の時間配分の目安となるものを上げておくので、参考にしてください。
問題 | 分野 | 解答時間 |
問1 | リスニング | 10分 |
問2〜4 | 文法 | 8分 |
問5 | 英作文 | 3分 |
問6 | 長文読解 | 9分 |
問7 | 資料読解 | 7〜8分 |
問8 | 長文読解 | 10分 |
計47〜48分 |
試験本番と同じ「時間割」で解く
入試当日は誰もが緊張します。高校進学は将来を大きく左右することなので、緊張するのも当たり前です。試験本番で緊張しないように、入試のタイムスケジュールに慣れておくことをオススメします。
過去問を使って試験本番の「時間割(タイムスケジュール)」と同じように問題を解いてみましょう。このときは科目の間の休憩やお昼休みも時間通りにキッチリととります。入試の時間割を経験しておくと、当日は落ち着いて試験に臨めるでしょう。以下に「2021年度 神奈川県立高校入試 時間割」(予定)を上げておくので、参考にしてください。
時刻 | 教科等 | 所要時間 |
9:20〜10:10 | 英語 | 50分 |
10:25〜11:15 | 国語 | 50分 |
11:30〜12:20 | 数学 | 50分 |
13:10〜14:00 | 理科 | 50分 |
14:15〜15:05 | 社会 | 50分 |
神奈川県の入試は英語のリスニングからスタートします。ふだんから「リスニングの勉強は朝イチに行う」習慣をつけておくとよいでしょう。また、科目の間の休憩が15分と長く、これにも慣れる必要があります。
再演習は「分野別」にまとめて行う
過去問の再演習は「分野別」にまとめて行うようにしましょう。分野別とは先のMEMOで述べたよう、英語の問4「文法の並び替え」、数学の問3「関数」などを指します。分野別の演習も時間を決めて解くようにしてください。
分野別に再演習をすることで、それぞれの出題形式や問題の解法パターンを意識できるようになります。大手の塾では分野別にまとめた問題集(テキスト)を使うので、塾なしの受験生はここでその演習をしておきましょう。
ノートに解き直しをする
入試の過去問演習においてもっとも大切なことは、解けなかった問題の解き直しをすることです。「解けなかった」問題には2つパターンがあって、ひとつは「わからなかった」もの、もうひとつは「解いたけれど間違えた」もの。この2つはどうしてできなかったのか理由をノートに書き込み、似たような問題を解いて復習をしましょう。
入試当日には解き直しノートをもって行く
入試の当日にできる勉強と言えば、今まで解いた問題をしっかりと見直すことくらいです。そのときに持参できるように、模試や過去問の解き直しノートを作成しておきましょう。できれば、科目ごとにわけておくと、試験のときに見やすいと思います。
今までに苦労して解き直した問題や、いつもミスしてしまう問題など、そのノートにはあなたが懸命に受験の勉強をした証があるはずです。それらを試験前に見直せば、「ここに来るまでにこれだけの勉強をしたのだから、絶対に大丈夫!」という気持ちになれるでしょう。解き直しノートがあれば、安心して試験に臨めます。